2022.04.05 Update
“果樹王国”山梨県が参加した「4パーミル・イニシアチブ」。土壌への炭素貯留とは?
「4パーミル・イニシアチブ」とは、土壌への炭素貯留量を1年に0.4%ずつ増やすことでカーボンニュートラルを目指す国際イニシアチブ。都道府県として初めて同イニシアチブに参加した山梨県の取り組みをご紹介します。
農業による土壌への炭素貯留を促す「4パーミル・イニシアチブ」
農業大国フランスが、2015年に国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で提案したのが「4パーミル・イニシアチブ」。土壌に炭素を年0.4%(4パーミル)ずつ蓄積することでカーボンニュートラルを目指そうとする働きかけです。
4パーミル・イニシアチブには、世界中から699の団体が参画しています(2022年3月末現在)。その中で、都道府県で2020年4月に初めて参加したのが山梨県です。
出典)山梨県「山梨県における4パーミルイニシアチブの取り組み 炭化・貯留 剪定枝」
山梨県が実践する4パーミル・イニシアチブに向けた取り組みは、次の4つ。「堆肥など有機物の(土壌への)投入」「草生栽培」「剪定枝のチップ化・堆肥化」、そして「剪定枝バイオ炭」による果樹園への炭素貯留です。
剪定枝バイオ炭とは、農家が果実を収穫した後に剪定した枝を燃焼し、炭にしたもの。これを土壌改良剤として土壌に投入し、地中に炭素を貯留します。営農を続ける限り、バイオ炭中の炭素の70〜80%が半永久的に土壌に固定されます。
こうした4つの取り組みによって、農場の生物多様性を確保できるほか、土壌の質を向上させることもできるのです。
山梨県はなぜ「4パーミル・イニシアチブ」に参加したのか
剪定された枝は従来、燃やされるかチップ化・堆肥化されていました。これらの処理でも、大気中の炭素を増やすことはなくカーボンニュートラルとみなされます。
しかし、炭素吸収量が排出量を上回る「カーボンネガティブ」を実現するには、炭素をより積極的に減らす必要があります。そこで、山梨県は剪定枝バイオ炭による炭素貯留に取り組むことにしたのです。
一般的に、農業分野での地球温暖化対策では、変化に対応する「適応策」が行われることが多いと考えられます。例えば、高い気温でも育つ品種改良などです。
その一方で、山梨県の4パーミル・イニシアチブは温暖化を抑制する「緩和策」。山梨県は「農業サイドから脱炭素化に貢献できる」と、国内外で情報発信を行なっています。
「第5回 4パーミル・イニシアチブ・デー」でスピーチする坂内啓二 山梨県農政部長(右)
出典)山梨県農政部
具体的には、炭素貯留を活用した農産物を認証する「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」を創設し、ブランド化を推進しています。また、2021年のCOP26に合わせて開催された「第5回 4パーミル・イニシアチブ・デー」では、日本からの唯一の参加者として招待されリモートでスピーチを行いました。
こうした山梨県の取り組みには多方面から関心が寄せられ、今後ますます4パーミル・イニシアチブの広がりが予想されます。
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook