続々増える自治体のPPA。3つの実例からポイントを解説

2022.10.25 Update

再エネ 脱炭素

続々増える自治体のPPA。3つの実例からポイントを解説

地域脱炭素の実現に向け、太陽光のPPA電力購入契約)を導入する自治体が増えています。今回は自治体のPPAプロポーザルなどの実例を3件ご紹介し、自治体によるPPAの可能性に迫ります。

PPAとは

はじめに、PPA(電力購入契約、Power Purchase Agreement)とは、PPA事業者が需要家の施設の屋根に太陽光発電設備を無償で設置し、需要家が電気の使用量に応じてPPA事業者にサービス料金を支払うモデルです。契約期間は20年間など長期であるケースがほとんどです。需要家が初期費用を負担する必要がないため、太陽光発電設備を導入するハードルが低いことが特徴です。

PPAとリースとの違いは、サービス料金の設定の仕方や余剰電力の取り扱いにあります。PPAでは、サービス料金が電気の使用量に応じて変動しますが、リースでは、契約によりますが固定の金額であることが多いでしょう。また、PPAでは余剰電力を売って収益を上げることはできませんが、リースでは可能な場合があります。

自治体によるPPAの実例

PPAは、米国などで先行した太陽光発電の活用モデルです。太陽光発電設備を建設するための土地をもたない需要家であっても、再生可能エネルギーを導入できることから、大企業を中心に導入が進んできました。国内でも徐々に広がり、補助制度などの後押しもあってPPAの規模もだんだんと大きくなっています。特に、近年は電気料金の値上がりを受け、みずからPPAを選択する需要家が増えているようです。

続いて、地方自治体によるPPAプロポーザルの実例を抜粋してご紹介します。

①横浜市

横浜市は2020年12月、市内小中学校65校を導入先とする太陽光と蓄電池のPPAの公募型プロポーザルを行いました。特徴的なのは、平常時に使いきれなかった電気を貯めるだけでなく、非常時に防災用電源として活用することも目的に組み込まれた点です。事業者には設備の導入だけでなく、運転管理・維持管理を行うことも求められました。選定された実施事業者は東京ガスです。

 

(横浜市のPPA事業のスキーム。出典:横浜市

さらに、東京ガスはPPAを発展させた提案を行っています。それは、自己託送によって太陽光の余剰電力をほかの市有施設へ供給するというものです。これによって、太陽光の余剰電力を余すところなく活用し、エネルギーの地産地消を最大化することができると期待できます。

(参考:横浜市『市有施設への再生可能エネルギー等導入事業の 実施事業者を公募型プロポーザルで選定します』、東京ガス株式会社 プレスリリース

②世田谷区

世田谷区は2022年4月、避難所に指定されている区立中学校14施設を対象とする太陽光・蓄電池のPPAプロポーザルを実施しました。維持管理費用などを含め電気代として支払うこと、その水準は現在の電気代と同程度とすることなどが条件とされました。このプロポーザルでは、東京電力ホールディングスと日本電信電話(NTT)が出資するTNクロスが選定されました。

(世田谷区のPPA事業のイメージ。出典:世田谷区

(参考:世田谷区『公共施設における太陽光発電設備等の設置事業(自家消費型太陽光発電設備等設置PPA事業)』、TNクロス株式会社 プレスリリース

③浦添市

浦添市は2022年5月、市立港川中学校で太陽光のPPAを実施しました。これは浦添市と沖縄電力の包括連携協定に基づくもので、沖縄電力グループの沖縄新エネ開発というPPA事業者がサービスを提供しました。また、合わせて蓄電池も設置し、災害などによる停電時には、蓄電池から電気を供給することでレジリエンスの強化も図るとしています。

(出典:沖縄電力株式会社『浦添市立港川中学校への第三者所有モデルを活用した 太陽光発電システムの運用開始について』)

このように、PPAの主な実施手段としてはプロポーザルが多く、蓄電池を組み合わせることで非常時のレジリエンス強化にも役立てようとする動きも見受けられます。ほかに千葉市避難所を対象とするPPAプロポーザルを実施しており、佐渡市では現在、PPAなどを行うモニター事業者の募集も行っているところです。PPAの先例が増えてきたこと、電気料金の高止まりによって入札によるコストダウンが見込みにくいことからも、今後、ますます多くの自治体がPPAに取り組むと予想されます。

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook