2025.01.31 Update
ペロブスカイト太陽電池、発祥の横浜市で実証進む
横浜市は、次世代型太陽電池であるペロブスカイト太陽電池の普及に向けた実証実験に取り組んでいます。市庁舎などの公共施設で実証が行われ、商用化に向けた取り組みが加速しています。
ペロブスカイト太陽電池とは
ペロブスカイトとは、特定の結晶構造を指します。ペロブスカイト太陽電池とは、主に有機アンモニウム、鉛、ヨウ素をペロブスカイト結晶構造で配列して発電する太陽電池のことです。日本はヨウ素の主要産出国であり、世界シェアはチリに次ぐ第2位。ヨウ素は希少な国産の天然資源なのです。
現在、太陽光パネルとして広く普及しているものは、シリコン系(Si)の太陽電池です。一般的なシリコン系太陽電池の商用製品の発電効率は20%台前半ですが、理論上の最大の発電効率は29%とされています。ペロブスカイト太陽電池は有機系太陽電池の1つであり、発電効率は26.7%まで向上しています。
ペロブスカイト太陽電池は、フィルム状や皮膜などにしてさまざまなものに塗布できます。軽量なため、ビルの壁面やガラス、柵、塀など、これまで太陽光パネルの設置が難しかったところにも導入しやすくなります。遊休地が少ない都心部では、シリコン系太陽電池の設置に適した土地が少なくなっていますが、建物などに搭載しやすいペロブスカイト太陽電池は、再生可能エネルギーの導入拡大に役立つと期待されています。
公共施設を活用し屋内・屋内での稼働を実証
ペロブスカイト太陽電池を発明したのは、横浜市にある桐蔭横浜大学 医用工学部の宮坂力特任教授です。国産の技術であり、主原料のヨウ素が国内で調達できることから、国や地方自治体がペロブスカイト太陽電池の普及を目指しています。
発祥の地である横浜市は、公共施設を活用してペロブスカイト太陽電池の実証実験を行うなど、PR・広報活動に力を入れています。第一弾として、昨年9〜11月には東芝エネルギーシステムズの実証によって、市庁舎アトリウム内にペロブスカイト太陽電池を設置し、LED電灯を点灯するなどして発電の状況を検証しました。昨年12月からの第二弾では、AGCが市庁舎アトリウムの既存の窓(屋内)にペロブスカイト太陽電池を後付けし、建物の工事を伴わない取り付け方法を実証しました。
さらに、今年1月からの第三弾では、ビル壁面への設置を想定して、窓ガラスの背面にペロブスカイト太陽電池を配置した試験体を横浜市の北部第二水再生センターに設置し、発電量の評価・検証を行うとしています。
量産化の技術を確立して早期の商用化に期待
横浜市の大さん橋デッキ上では、環境省の実証事業も行われています。この実証では、宮坂特任教授が代表を務めるペクニカ・テクノロジーズとマクニカ、麗光の3社が、ペロブスカイト太陽電池のモジュールの効率化や量産化を目指して、屋外での稼働に関する実証を行っています。(参考:マクニカ、ペロブスカイト太陽電池を活用する実証実験を開始 | SMART CITY NEWS(スマートシティニュース))
国産の次世代型太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池。数々の実証によってノウハウが蓄積され、商用化が進むことを期待しています。
(参考:横浜市)