2021.06.07 Update
資源エネルギー庁の『地域マイクログリッド構築のてびき』、ここがポイント!
「地域マイクログリッド」とそのメリットとは?
2021年4月16日、資源エネルギー庁が『地域マイクログリッド構築のてびき』を発表しました。地域マイクログリッドとは、普段は既設の送配電ネットワークを活用して電気を調達し、非常時にはネットワークから切り離して電気の自給自足をする柔軟な運用が可能なエネルギーシステムです。
地域マイクログリッドが注目されるきっかけとなったのは、2019年の台風15号による停電被害でした。台風15号は関東地方に甚大な被害をもたらし、特に千葉県内では大規模な停電が続きました。
しかし、自治体新電力の株式会社CHIBAむつざわエナジーは、自営線とガスエンジン発電機を活用し、道の駅や近隣の住宅に電気と温水を供給し続けることができました。このモデルは地域マイクログリッドとは異なりますが、エネルギーを自立化することの大切さが再確認される出来事となりました。
地域マイクログリッドには、停電被害の軽減のほかにも、地域の再生可能エネルギーを有効利用できるメリットがあります。また、新たなエネルギーシステムの構築による地域産業の活性化も期待されています。
「都市部」と「非都市部」別の典型モデル
『地域マイクログリッド構築のてびき』では、まず、地域マイクログリッドのモデルを「都市部」と「非都市部」に分類しています。都市部とそうでないエリアでは、想定される災害や避難者数、電力需要などが大きく異なるためです。さらに、非都市部を半島や山間部などの「郊外」と「離島」に細分化しています。
(出典:『地域マイクログリッド構築のてびき』)
「郊外」は送配電ネットワークの末端にあたることが多く、非常時の独立運用がしやすい傾向にあります。「離島」は、比較的小規模な場合、島全体をマイクログリッド化することで災害に強いインフラを構築することにつながります。一方で、「都市部」は送配電ネットワークや電力需要が複雑なため、非常時の電力供給などの設備が大規模になると予想されています。
地域マイクログリッドが非常時にしっかりと機能するには、エリアの特性に応じたシステムを構築することが重要です。
(出典:資源エネルギー庁)
早めの電力データ収集・整理がおすすめ
実際の検討にあたって何から始めればよいのか、関係者としてどのようなメンバーが考えられるかなどについても『地域マイクログリッド構築のてびき』で丁寧に解説されています。まさに、ゼロからスタートするのに最適な充実の内容です。
全体の流れは、大きく分けて「導入検討」「導入プラン作成」「マイクログリッド構築」の三段階です。第一段階の「導入検討」では、マイクログリッドの必要性や目標、概要などを定めることが推奨されています。
具体的な協議や調査は、第二段階の「導入プラン作成」に詳述されていますが、可能であれば検討の当初におおまかな対象エリアのイメージや電力需要などの基礎データを集めておくことをおすすめします。特に、需要施設が多数になると電力契約の主体やデータの管理方法もバラバラであるため、事前に整理しておくとスムーズでしょう。
「導入プラン作成」の段階では、一般送配電事業者や地域の関係者などとの協議に加え、内部組織の他部署との連携も必要になります。基本的なことですが、協議にしっかりと備えるためにも、必要な情報を予め集めておく方が安心です。
2022年度から始まる配電事業のライセンス制
さて、昨年の電気事業法の改正によって、2022年4月から配電事業のライセンス制が導入される予定です。これは、地域マイクログリッドを行うために、一般送配電事業者に限定されてきた配電事業をライセンス制として、新しい事業者の参入を認める措置です。
これからますます活躍が期待される地域マイクログリッド。再生可能エネルギーを最大限活用しながら災害に強い地域や都市の実現に貢献することが望まれています。
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook