2024.04.11 Update
オーバーツーリズムの課題解決につながる「ニセコモデル」
北海道倶知安町(くっちゃんちょう)とニセコ町では、タクシーアプリを使って冬季期間のオーバーツーリズムによる交通課題を解決するための取り組みを実施しました。その結果、インバウンドを含む合計2万件以上の乗車があったとのことです。いったいどのような取り組みだったのか、オーバーツーリズムの解決のヒントを探ります。
ニセコモデルの利用2万件の成功事例
(画像出典:GO株式会社)
北海道ハイヤー協会、北海道倶知安町(くっちゃんちょう)、ニセコ町、GO株式会社は2023年12月〜2024年3月の冬季期間、増大する観光需要に対して、次のような仕組みでタクシーの派遣を行いました。倶知安町・ニセコ町(ニセコエリア)限定でタクシーの営業区域外旅客運送と遠隔点呼の仕組みを活用して、札幌や東京のタクシー事業者から応援隊派遣を行いました。タクシーの配車は、すべてニセコエリア内の発着となるタクシーアプリ「GO」を通じた注文のみで行いました。
本来、タクシーの営業区域はあらかじめ定められており、営業区域外で旅客運送を行うことは禁止されています。ただし、災害など緊急の場合や、地域の需要に応じた運送サービスを提供することが困難な場合には、例外的に区域外での旅客運送が認められることがあります。
ニセコエリアでは、2023年12月11日〜2024年3月19日までの期間に、合計2万件以上の乗車があったとのこと。そのうち約9割がインバウンドの利用者で、年末年始と旧正月の時期に、特に需要が高まったとのことです。利用者のリピート率は8割と高く、好評のうちに終了したとしています。
この取り組みは「ニセコモデル」と呼ばれ、旅客輸送の観点によるオーバーツーリズムの解決策として関心を集めています。
(参考:GO株式会社プレスリリース)
オーバーツーリズムの課題、輸送力の強化
オーバーツーリズムとは、特定のエリアに急激に多くの観光客が訪れ、それによって地域の住民の生活や自然環境、景観などに影響が及ぼされる状況のことを指します。パンデミック後、海外からの観光客数が回復し、国内の多くの観光地が賑わいを取り戻しています。その一方で、過度の混雑などによって住民の生活の質が低下するなどの問題が顕在化しています。
こうした課題を解決するため、観光庁は去年10月、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を決定しました。同パッケージは主に、「観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」を行いながら、都市部など観光客が集中するエリアから「地方部への誘客の推進」するというコンセプトで構成されています。
中でも、鉄道やバス、タクシーといった移動手段に関する課題意識は高く、都心部の混雑緩和や輸送力の強化が挙げられています。今後、パッケージの方針に従って、観光客が地方部へと誘導されれば、地域における移動手段の確保はより大きな課題になるでしょう。今回の「ニセコモデル」を参考に、観光客だけでなく地域住民にとっても快適な観光のあり方が実現されるように期待しています。
(参考:観光庁『オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組』)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook