二地域居住・移住の課題と解決策を探る、国土交通省

2024.09.03 Update

エリマネ 官公庁 二地域居住

二地域居住・移住の課題と解決策を探る、国土交通省

 

国土交通省は二地域居住や移住などの促進に力を入れています。このほど実施された「移住等の促進に向けた実証調査」では、地方公共団体と連携した取り組みを行うNPO法人や企業などの先進的な取り組みを6件採択しました。二地域居住・移住の課題と解決策を探ります。

 

関心が高まる若い世代の二地域居住と移住

 

二地域居住とは、都市部と地方部に2つの地域を持って暮らすライフスタイルです。例えば、平日は都心部で仕事をして、休日は地方で趣味を楽しみながら過ごすといったスタイルです。

 

二地域居住には、住む側と受け入れる側の双方にメリットがあるとされています。住む人は、異なる生活環境に身を置くことでリフレッシュして、生活にゆとりを持つことができます。一方で、受け入れる側では、新たな人口が流入するため、地域に活気が生まれて、経済循環の促進などが期待できます。

 

これまで、二地域居住は富裕層や仕事をリタイアした人のセカンドライフで行うものと考えられてきました。しかし、近年、二地域居住のあり方が多様化して、都心で働く若い世代も週末に地方で田舎暮らしを楽しむなどのケースが増えているようです。

 

住宅・仕事・コミュニティのそれぞれに課題

 

その一方で、2つの生活地域を持つことにはさまざまなハードルがあります。例えば、移動手段に関していうと、地方ではマイカーがなければ移動や買い物に不便なことがあります。しかし、都心と地方の両方でマイカーを所有することには、さまざまな面から困難を伴います。

 

国土交通省は、二地域居住や移住を途中でやめてしまう要因として、「住まい(住環境)」、「なりわい(仕事)の確保・新しい働き方」、「コミュニティ(地域づくりへの参加)」を挙げています。仕事や子育てを現役で行う若い世代が新しい地域に定着するには、これらの課題それぞれに対して対策が必要だといえるでしょう。

 

移住の促進に向けた実証調査、定着を目指す

 

国土交通省がこの8月に実施した「移住等の促進に向けた実証調査」では、地方公共団体と連携した取り組みを行うNPO法人や企業などの先進的な取り組みが6件採択されました。この実証調査では、これらの取り組みについて調査・分析を行い、課題の解決を目指します。採択された取り組みの中から、株式会社perch(新潟県佐渡市)と合同会社うさぎ企画(静岡県三島市・長泉町)の概要を紹介します。

 

株式会社perch(新潟県佐渡市)

新潟県佐渡島で、築70年の古旅館をリノベーションしたホステル「HOSTEL perch」を運営する株式会社perch。“perch”は英語で「止まり木」を意味します。ホステルにはカフェやバー、フィンランド式サウナ、コワーキングスペースが完備され、国内外の観光客や地元の人々に利用されているとのこと。

 

実証では、魅力的な二地域居住の受入れ体制を構築するために、地域社会における持続可能な農業や持続可能なエネルギーへのシフトといったテーマに沿った「学び」→「実践」→「共有」の循環型体験学習プログラムを提供するとしています。これによって、地域課題となっている若者の社会減や移住後の定着率の減少の解決を目指します。

 

さらに、コミュニティ全体における動線の設計や運営・マネジメントを考慮した佐渡市全体の二地域居住マスタープラニングに活かすことを狙います。

(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000136776.html

 

合同会社うさぎ企画(静岡県三島市・長泉町)

 

東京都や静岡県を中心に、「人づくり・場づくり・足づくり」をモットーにさまざまな地域課題の解決を目指している同社。2019年に国内で初めて観光型MaaS(Mobility as a Service)を立ち上げた企業でもあります。

 

実証では、まず、二拠点生活・移住の適地として選ばれる必須要件を探るとしています。具体的には、マイカーなしで暮らせる移動環境、教育環境、起業含めたライフサイクルに合せた選択肢などを挙げています。

 

続いて、エリア全体の一層の差別化を図るため、三島市内のお試し移住ハウスに、多様な世代、ニーズを持つ移住者を誘致し、ビジネス交流やコミュニティ交流、オンデマンドシャトル体験などを通じて、定着につながる必須の要素や、移住・二拠点の本格検討に進むための要件・課題を整理するとしています。

(参考:合同会社うさぎ企画

 

 

今回の実証調査を通じて、二地域居住や移住のハードルが解消されれば、若い世代だけでなく、より多くの世代においてもより自由なライフスタイル、働き方を選べるようになることでしょう。地域の活性化にもつながるような実証成果を期待しています。

(参考:国土交通省

 

 

 

 

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook