2021.06.14 Update
自治体のシナリオ策定を支援する環境省「ゼロカーボンシティ基盤整備事業」とは?
環境省の令和3年度(2021年度)のエネ特による補助事業が発表されました。エネ特とは「エネルギー対策特別会計」の略で、地球温暖化対策のための税を原資に再エネ・省エネ設備の導入を補助するものです。その中から、地方自治体における「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」をご紹介します。
ゼロカーボンシティ目指す基盤整備が目的
「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」は、令和3年度から新しく始まったもので、予算は8億円です。災害や新たな生活様式などを踏まえ、自治体がゼロカーボンシティを目指す基盤整備が目的です。
(出典:環境省)
ゼロカーボンシティを目指すうえで初期のステップである「現状把握」「計画策定」「合意形成」をサポートするものです。これから具体的な検討を始める自治体などにおすすめの補助事業だといえます。
事業内容の詳細は以下の通りです。
1.自治体の気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状把握(見える化)支援
- ゼロカーボンシティ実現のため、地方公共団体実行計画策定・実施等支援システムの整備や地域の温室効果ガスインベントリの提供により、自治体の気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状把握(見える化)を支援する。併せて環境省としても自治体の施策の実施状況を把握する。
2.ゼロカーボンシティの実現に向けたシナリオ等検討支援
- ゼロカーボン実現に向けた長期目標・シナリオ、具体的対策に関する調査検討や、統合モデル・シミュレーション開発を通じた経済活動回復と脱炭素化を両立するための転換シナリオ検討等を踏まえつつ、自治体向けの計画策定ガイドライン等として取りまとめ、自治体等へフィードバックを行う。
3.ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の合意形成等の支援
- ゼロカーボンシティ実現のために必要となる地域における徹底した省エネと再エネの最大限の導入を促進するため、地域経済循環分析やEADAS(環境アセスメントデータベース)等を地元との合意形成ツールとして整備する。
「温室効果ガスインベントリ」の情報提供
この事業では、現状把握の支援として地域の温室効果ガスインベントリが環境省から提供されることになっています。温室効果ガスインベントリ(Greenhouse Gas Inventory)とは、気候変動対策においては「国が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量をとりまとめたデータ」を指します。国連の気候変動枠組条約によって、いわゆる先進国は毎年提出することが定められています。
温室効果ガスインベントリでは、排出・吸収源を「エネルギー」「工業プロセス及び製品の使用」「農業、森林及びその他土地利用変化」「廃棄物」の4つのカテゴリーにわけて分類します。日本では、環境省が温室効果ガスインベントリの取りまとめを行っています。
「環境アセスメントデータベース」で合意形成
合意形成のツールとして整備されるEADAS(環境アセスメントデータベース)についても説明します。
環境アセスメントデータベースのEADAS(イーダス)とは、環境アセスメントに必要な自然・社会環境に関する情報をまとめたデータベースです。平成26年度から運用開始され、平成29年7月に大きくリニューアルされました。
EADASでは、環境アセスメントや再生可能エネルギー発電設備の導入の際に必要なデータが一元的に整理されています。例えば、日射量や風況のマップに加え、FIT認定設備や計画中の発電設備の概略位置も確認できます。スマートフォンやタブレット端末からもアクセスでき、屋外や出先などでも利用できる便利なシステムだといえます。
(出典:環境省『環境アセスメントデータベース』より日射量マップ)
ゼロカーボンシティの総人口1.1億人を超える
2050年に二酸化炭素排出実質ゼロを表明した自治体は407にのぼり、表明自治体の総人口は1億1,000万人を超えました(2021年6月11日現在)。ゼロカーボンシティを目指すファーストステップとなる現状把握やシナリオ・計画の策定。多くの自治体がこの補助事業を利用すると予想されます。
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook