改正温対法、カーボンニュートラルに向けた地方自治体の役割に期待

2021.07.01 Update

カーボンニュートラル

改正温対法、カーボンニュートラルに向けた地方自治体の役割に期待

2021年5月26日、地球温暖化対策推進法(温対法)の一部改正案が成立しました。温対法とは、地球温暖化対策の基本方針を定め、国や地方公共団体、事業者や国民の責務を明らかにすることで対策推進を促す法律です。2006年4月からは、温室効果ガスを一定量以上排出する特定事業者に対し、毎年の排出量の算定・報告を義務付け、データを公表しています。

改正案のポイントは大きく次の3つです。

(1)2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念に

パリ協定の目標や「2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として位置づけられました。カーボンニュートラルを正式に法明記したことはこれが初とされています。脱炭素を目指す方向性を、キャッチコピーやスローガンではなく法体系に組み込んだことで、取り組みの推進やイノベーションの加速を図ります。

(2)地方創生につながる再エネ導入を促進

地域の脱炭素化に貢献する「地域脱炭素化促進事業」を市町村が認定することで主体的に進める制度を創設します。認定された事業に関しては、行政手続きがワンストップ化されるなどの特例が認められます。地域が脱炭素化事業に積極的に関わることで、コミュニケーションの円滑化を目指し、地域に愛される再エネの導入を目指す意図があります。

(3)企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化

企業の毎年の排出量の算定・報告データを開示しやすくします。報告を原則としてデジタル化するほか、開示請求手続きを不要にし、開示にかかるリードタイムも短縮します。

地方自治体の主体的な関与で円滑な合意形成を

このうち、地方自治体の脱炭素化に深く関係する(2)地方創生につながる再エネ導入を促進について説明します。改正案では、地域の再エネを単に増やすのではなく、同時に地域の課題解決を目指すことが想定されています。

そのため、「地域脱炭素化促進事業」を市町村が認定するなど、地方自治体の主体的な関与を求める内容になっています。地域の脱炭素化を進めるには円滑な合意形成が必要条件だと明示されたと考えることもできます。

地方自治体が促進事業に携わることで、事業者側が地域の課題を認識し、解決に向けた新たなソリューションにつながるかもしれません。また、事業者という第三者の視点による、地域の未利用資源や特性を活用した新たな提案も期待できるでしょう。

2050年カーボンニュートラルのカギを握る地域の取り組み。温対法の改正によって、地域の脱炭素化と課題解決が両輪となって加速するよう待ち望まれています。

(トップ画像出典:環境省

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook