対馬市、海洋プラごみを“資源”に。エルコムのシステムで燃料化

2022.02.24 Update

SDGs カーボンニュートラル プラスチックごみ

対馬市、海洋プラごみを“資源”に。エルコムのシステムで燃料化

多くの離島にとって難題とされる海洋プラごみ。これを資源に変え、燃料として島内で処理を完結する斬新な取り組みが、長崎県対馬市でスタートしました。

日本一多くの海洋プラごみが漂着する対馬市

国境の島・長崎県対馬市は、対馬海流が日本海に流れ込む入り口に位置しています。また、沿岸の多くがリアス式海岸に囲まれているため、海洋プラスチックごみが日本でもっとも多く流れ着く場所であるといわれています。

一般社団法人対馬CAPPAの「対馬海ごみ情報センター」が公表しているデータによると、2020年度の漂着ごみ回収量は135立方メートルでした。このうち、約半分が海洋プラスチックごみだとされているのです。

廃プラのほとんどが埋め立てか島外に搬出

対馬市ではこれまで、こうした海洋プラごみを回収し「油化処理」という化学処理によるケミカルリサイクルを行っていました。

しかし、こうした油化処理では、廃プラスチックのすべてを処理できるわけではありません。処理できるのは約2割にとどまり、約8割は埋め立てるか島外の処理施設へ搬出しなければなりませんでした。

海洋プラごみの処理を島内で完結するために

出典)株式会社エルコム

そこで2021年2月、漂着・海洋プラスチックごみ対策事業において、漂着プラごみを直接燃料に変えるために、株式会社エルコム(北海道札幌市)の漂着プラごみ燃料化システムを採用したのです。

この漂着プラごみ燃料化システムは「ステラ」「クダック」「スチロス」という名称の小型サーマルリカバリーシステム。漂着したブイなどを、破砕・減容し、樹脂のペレットという燃料にすることができます。こうしてできた燃料を活用すると、海洋プラごみを島内でエネルギーとして利用することができるようになるのです。

このシステムは、1時間あたり最大100キロの廃プラスチックを処理することができます。また、直径80センチ、長さ100センチの巨大な漂着ブイもそのまま装置に投入することが可能。破砕からペレット化に至るまで、全自動で処理を行うことができます。

こうして製造されたペレット燃料は、灯油(1キロあたり約8,800キロカロリー)と同じくらいの高いエネルギー価値をもっており、ボイラーなどの燃料として使うことができます。

海洋プラごみを島内の温浴施設の熱源に変える

出典)株式会社エルコム

さらに、2022年2月には、同社の樹脂破砕機「クダック」を導入し、漂着ブイだけでなく、より硬質のプラスチックごみも破砕できるようになりました

対馬市は今後、エネルギー化装置である樹脂燃料ハイブリッドボイラー「イーヴォル」を導入し、つくった熱エネルギーを島内の温浴施設で利用する予定とのことです。

このように海洋プラごみを燃料化して島内で循環させることによって、ライフサイクル全体で年間最大85トン(CO2換算)の温室効果ガスを削減できると見込まれています。

今回の取り組みは、プラスチックごみの処理を島外に依存せず、島内の資源として完結できるエネルギー化モデル。また、温浴施設の熱源として活用することで、地域住民へもベネフィットを提供できる新たな取り組みとして脚光を浴びています。

参考)https://www.elcom-jp.com/2022-0208

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook