COP27の成果は? 「ロス&ダメージ基金」で途上国の支援を強化

2022.12.26 Update

気候変動

COP27の成果は? 「ロス&ダメージ基金」で途上国の支援を強化

2022年11月6日から20日にかけ、エジプトのシャルム・エル・シェイクでCOP27が会期を延長して開催されました。議長国エジプトが掲げた優先課題は、温室効果ガス排出量の削減、気候変動の悪影響による損失と損害への具体的なアクションなどです。COP27の成果について解説します。

途上国支援の具体的なアクションが焦点に

これまでのCOPでも、地球温暖化の影響を受けやすい発展途上国に対する具体的なアクションについてたびたび指摘されてきました。温暖化は先進国が排出した温室効果ガスに起因するにも関わらず、ツバルのような島国が海面上昇などの被害をもっとも受けやすいといったケースがその典型です。そこで、気候変動にぜい弱な途上国が先進国に対して求める支援の内容が、COP27の主要トピックの1つとされていました。

COP27では、気候変動による災害で被害を被った途上国への資金支援のあり方が議論されました。激しい議論の結果、気候変動の悪影響に伴う損失と損害(ロス&ダメージ)を支援する措置として「ロス&ダメージ基金(仮称)」を設置することが決定したのです。こうした新しい基金の設置などの措置に関して、翌年のCOP28に向けて移行委員会を設けることも決定しました。

NDC強化や石炭火力のフェードアウトも決定

COP27ではまた、昨年のCOP26での全体決定「グラスゴー気候合意」を踏まえつつ、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金などの分野で対策強化を求める「シャルム・エル・シェイク実施計画」も決定されました。

この計画では、パリ協定の1.5℃目標に向けた取り組みの重要性を再確認し、2023年までに温室効果ガス排出削減目標(NDC)を設定していない締約国に再設定や強化を求めるとされました。また、日本を含むすべての締約国に対し、排出削減対策の施されていない石炭火力発電を次第に減らしていくこと、非効率な燃料補助金をフェードアウトさせる努力を加速させることなども含まれました。

先進国による資金目標の未達成に指摘も

現在、先進国には年間1,000億ドルを気候変動対策のために拠出するという目標が課されています。しかし、この目標は未達成の状況が続いており、途上国からは進捗の報告を求める声が上がっていました。そこで今回、隔年で資金目標の進捗報告書を作成することが決定されました。

今回のCOP27では、全体を通して気候変動対策が具体的なアクションとして進んだといえるでしょう。途上国であるエジプトが議長国を務めたことで、議論が進展したと考えられるかもしれません。しかし、一歩踏み出したとはいえ、資金目標などの課題も山積しています。COP27の結果を受け、さらなる気候変動対策の加速が望まれます。

(参考:国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要|外務省

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook