2023.05.12 Update
太陽光義務化、群馬県は融資制度で後押し。東京都や川崎市との違いは?
建築物へ太陽光発電設備を設置することを義務付ける自治体が増えています。東京都や川崎市に続き、群馬県も4月から太陽光義務化に関する条例案を施行しています。群馬県の条例にスポットを当てながら、東京都や川崎市との違いについてまとめました。
群馬県、対象は延べ床面積2000平方メートル「以上」
群馬県は4月、大規模建築物に太陽光発電設備の設置を義務付けるなどの「ぐんま5つのゼロ宣言実現条例」を施行しました。「ぐんま5つのゼロ宣言」は、従来の群馬県地球温暖化防止条例を引き継ぎ、2050年までに環境に関する課題を解決し、持続可能な社会の実現と県民の幸福度の向上を目指すものです。「自然災害による死者ゼロ、温室効果ガス排出量ゼロ、災害時の停電ゼロ、プラスチックごみゼロ、食品ロスゼロ」という5つのゼロの実現を目指しています。
(参考:https://www.pref.gunma.jp/page/6605.html)
条例では、延べ床面積2,000平方メートル以上の建築物に対して、新築・増築時に太陽光発電設備を設置することを義務付けました。同面積以上であれば事業所だけでなく住宅も含み、建築面積が150平方メートル未満の建築物は対象外とされています。なお、年間を通じて日中に日陰になるなど太陽光発電の設置が難しい場合は、県の判断によって導入義務を免除することもあります。
(『ぐんま5つのゼロ宣言実現条例』の義務規定の対象。出典:群馬県)
また、同条例を施行するにあたって県は、低利による融資制度の創設、国の支援制度の活用、第三者所有モデルの推進などの負担低減策に取り組むとしています。その一環として、県は「電力価格高騰対策・再エネ導入支援事業費補助金」によって、FIT制度に頼らない太陽光発電設備や蓄電池の設置に対して補助を行っています。
(『電力価格高騰対策・再エネ導入支援事業費補助金』の補助対象設備・補助額。出典:群馬県)
東京都と川崎市は中小規模建築物が対象
その一方で、東京都や川崎市では、延べ床面積2,000平方メートル未満の小規模な建築物を対象として、大手ハウスメーカーなどに太陽光発電設備の設置義務を課しています。群馬県と比べると、対象となる建築物の延べ床面積に大きな違いがあるほか、義務の主体も異なっています。
こうした違いは、それぞれの自治体の特性から生まれてくるものだと考えられます。一般的に、都心部ほど産業用需要家などの大規模な建築物が少なく、狭小住宅が多い傾向にあります。その一方で、地方には大きな工場や事業所があり、CO2排出量の割合も多くを占めると予想されることから、大規模建築物の脱炭素化から進める方が効率的な場合もあるでしょう。
東京都、川崎市、群馬県というそれぞれ特色の異なる自治体が太陽光義務化に踏み切ったことで、一つのモデルケースが完成したとも考えられます。今後、全国のさまざまな自治体において同様の制度が加速していくことでしょう。
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook