2023.06.16 Update
いわき市、燃料電池車で防災も脱炭素も。地元企業と連携協定を締結
福島県いわき市は5月18日、福島ミドリ安全株式会社、株式会社エナジアと防災に関する協定を締結し、災害時の生活支援拠点を充実させることなどを決定しました。また、国内で初めて水素で走る燃料電池自動車(FCEV)の営業バンを導入し、脱炭素とレジリエンスの両立を目指すとしています。
民間施設を災害時拠の物資やエネルギーの拠点に
福島県いわき市、福島ミドリ安全株式会社、株式会社エナジアは5月18日、「防災に係る連携と協力に関する協定」を締結しました。協定には、災害時に食糧や生活物資などを優先的に供給すること、福島ミドリ安全いわき支店を災害時の生活支援の拠点とすることなどが盛り込まれました。
2022年7月に開所した福島ミドリ安全いわき支店は、生活支援物資だけでなく、エネルギーの利活用拠点としても活用される予定です。具体的には、水素で走る燃料電池自動車(FCEV)や電気自動車(EV)などの充放電機能、太陽光発電と車載用リユース蓄電池などを組み合わせたV2Xシステムによって、災害時の電力の自家消費を実現するということです。
なお、V2Xとは“Vehicle to X(Everything)”という意味で、クルマと家、ビル、電力ネットワークなどあらゆるものをつなぎ、電気を融通することで全体としてエネルギーを効率よく使っていく仕組みのことを指します。
国内初・FCEVの営業バンを導入 マルチに活用
今回の協定にあたって、再生可能エネルギーの自給自足に関するサービスを提供する株式会社エナジアは、国内で初めて燃料電池自動車(FCEV)の営業バンを3台導入しました。これは、同社がトヨタ自動車、郡山観光交通、浪江町と取り組むNEDOの実証事業「マルチパーパスFCEVの給電技術を活用した新たな水素利活用モデルの構築」の一環です。
導入されたFCEVは今後、同社の営業用車両や長距離走行、リモートワーク、営業先での電動商品のデモンストレーションなどに活用されるとのこと。車体ナンバーは、パリ協定の目標を達成するためのマイルストーンである2030となっています。平常時は営業用車両として、非常時は電気や物資を届ける災害支援車両として活躍することが期待されます。
水素利活用の先進地・福島
いわき市では、これまでも水素を使ったFCEVや燃料電池バスなどの導入を進めてきました。公用車としてFCEVを導入するだけでなく、「いわき駅〜鹿島〜小名浜」間では、路線バスとして燃料電池バスが走行しています。
また、いわき市と同じく浜通りに位置する浪江町では、1万キロワット級の水素製造施設「福島水素エネルギーフィールド」で太陽光発電の電気で水素を生成する取り組みが行われています。太陽光発電などの再生可能エネルギーを使って生成される水素は「グリーン水素」と呼ばれ、CO2を排出しない究極の再生可能エネルギーとされています。
モビリティだけでなく製造現場などさまざまな場面での活用可能性がある水素。防災や脱炭素の分野にいても活用する自治体が増えていくでしょう。福島県の先駆的な取り組みに今後も目が離せません。
(参考:福島ミドリ安全株式会社、株式会社エナジアとの防災に係る連携と協力に関する協定の締結について|いわき市役所)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook