2023.09.07 Update
全国知事会が「系統用蓄電池」の支援拡充を提言
全国知事会は7月3日、第1回脱炭素・地球温暖化対策本部会議をオンラインで開催し、国への提言を取りまとめました。提言の中には、再生可能エネルギーの最大限活用に向けて系統用蓄電池の拡充を目指すことが盛り込まれました。これに関連して、系統用蓄電池とは何か、わかりやすく解説します。
再エネの出力変動や余剰電力の解決策に
全国知事会は7月3日、第1回脱炭素・地球温暖化対策本部会議をオンラインで開催しました。会議では、2050年カーボンニュートラルを目指すために「脱炭素社会の実現に向けた対策の推進に関する提言(案)」が公表され、交通、建築、産業、再生可能エネルギーなどの各分野における施策について提言されました。
このうち、再生可能エネルギー分野の施策については、再生可能エネルギー発電の出力変動や余剰電力を有効活用するために「系統用蓄電池」の導入拡大に向けた支援策の拡充が必要であるとされました。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電は、天候などによって出力が変動し、需要を超えて発電した場合には余剰電力が発生します。こうした場合には、再エネ発電所の出力を抑える出力制御が実施されており、出力制御の実施エリアは全国に拡大しつつあります。
しかし、2050年カーボンニュートラルや2030年のエネルギーミックスにおける再エネ38%以上を目指すには、再生可能エネルギーの主力電源化とともに最大限導入が必要とされています。そこで、発電した再生可能エネルギー電気を無駄にせず、より多くの再エネ発電設備を導入するために、系統用蓄電池を導入拡大することが重要だとされているのです。
系統用蓄電池 供給サイドで電気を安定的に運用
(大型の系統用蓄電池のイメージ。出典:資源エネルギー庁)
系統用蓄電池とは、電力ネットワークを安定化することを目的に、電力ネットワークや再生可能エネルギー発電所などに直接接続する蓄電池のことです。これまでの一般的な蓄電池は、需要場所に設置して電気の需要に合わせて充電・放電の制御を行っていましたが、系統用蓄電池は電力ネットワークや発電所という電気の供給側に設置される点が特徴です。
系統用蓄電池は、需要場所に設置される蓄電池より大規模なものが多く、電気の調整機能を担うことが期待されています。具体的には、太陽光発電などが多く発電して電気が余るときには蓄電し、逆に電気が足りないときには貯めた電気を直接電力ネットワークに放電するなどの調整機能を果たすことができます。
2022年5月の電気事業法改正によって、10MW以上の系統用蓄電池は発電事業と位置付けられました(2023年度施行)。これによって、既存の揚水発電と同様に保安規制などの対象になるなど運用ルールも決められています。
事業環境が整ったことから多くの事業者が系統用蓄電池への参入を表明し、資源エネルギー庁も補助制度を通じて系統用蓄電池の普及拡大を後押ししています。
(参考:https://www.nga.gr.jp/committee_pt/honbu/datsutanso_chikyuondanka/r05/2_2.html)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook