2024.03.21 Update
環境省が「くらしの10年ロードマップ」を公開、国民運動の浸透を急ぐ
環境省は2月16日、カーボンニュートラルの実現に向けて国民の行動変容やライフスタイルの転換を促すために、「くらしの10年ロードマップ」を作成しました。脱炭素へのシフトにあたって、ボトルネックだけでなく、対応策や効果を示すことで取り組みを促しています。具体的な方向性が明示されたことで、新たなくらしをイメージしやすくなりました。
「くらしの10年ロードマップ」の概要
(ロードマップのスコープ(暮らし全領域を大きく7分野に)。出典:環境省)
環境省がこのほど公表した「くらしの10年ロードマップ」では、くらし全体を上図の7分野に分け、それぞれについて現状、ゴール、ボトルネックを整理しています。くらしのあらゆるシーンを想定し、衣食住に加えて、職、移動、買い物といった要素も含まれています。
ライフスタイルを脱炭素型にシフトすると、光熱費などを毎月3.6万円節約できることや、余った時間を好きなことに費やせることなど、消費者にとっての直接的なメリットも訴えています。
行動変容のボトルネックを明らかに
ロードマップで特筆すべき点は、消費者の行動変容の制約要因(ボトルネック)を明らかにし、その解消に向けた対策の方向性を示した点です。例えば、省エネリフォームや太陽光発電設備の導入にあたって、まとまった初期費用が必要であるといったボトルネックに対しては、月々の支払いを一定額にしたり、1回の支払額を抑えたりできるサービスを提供するといった解決策の方向性を示しています。
さらに、節約した金額に応じて利用料を支払うサブスク型のサービスや、初期費用ゼロで利用できるPPAやリースといったサービスなどの提供を拡大するなどの仕掛けによって、消費者が抱える資金面のハードルを下げることができるといった具合に、対策の効果についても詳しく説明しています。
PDCAを回し進捗を毎年フォローアップ
環境省は、今回のロードマップに基づき、企業や自治体、団体などの連携や協働を後押しし、必要な支援策などを実施する考えです。ロードマップを未来の絵姿として位置付けるのではなく、PDCAサイクルを実施し、進捗を毎年フォローアップするとしています。つまり、今回示された7分野における施策が、これから強化されると考えられます。企業にとっては新たなビジネスチャンスになるとともに、自治体にとっても家庭部門における施策への反映が期待されます。
「デコ活」の認知度アップが急務
これまでも、温暖化対策をテーマとした2030年までの国民運動「COOL CHOICE」が行われてきました。オフィスにおける軽装を促すクールビズなどには多くの企業が取り組み、すでに社会に溶け込んだ印象があります。その一方で、家庭における行動変容はひとりひとりのライフスタイルに関わるため、よりハードルの高い課題だといえるでしょう。「COOL CHOICE」に代わる「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動・デコ活」が未来の絵姿にとどまらず、社会に広く受け入れられることを望みます。
(参考:https://www.env.go.jp/press/press_02781.html)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook