第7次エネルギー基本計画の原案、エネルギー安全保障と経済効率性を強調

2024.12.23 Update

再エネ 官公庁

第7次エネルギー基本計画の原案、エネルギー安全保障と経済効率性を強調

 

経済産業省・資源エネルギー庁は12月17日、第7次エネルギー基本計画の原案を公表しました。2040年に向けたエネルギー政策の方向性として、昨今の世界情勢を受け、エネルギー安全保障と経済効率性により焦点を当てています。

 

 

第6次計画では気候変動対策に重点

エネルギー基本計画は国のエネルギー政策の根幹となるものであり、資源エネルギー庁は数年ごとに改定しています。現行の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に策定されました。その前年にカーボンニュートラルを宣言し、同年4月に2030年度に温室効果ガスを46%削減(13年度比)という方針を掲げたことから、第6次計画では、「気候変動問題への対応」、「日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服」が特に重視されました。また、電気料金の低減と温室効果ガスの削減を両立する重要性も強調されました。

第6次エネルギー基本計画における2030年度のエネルギーミックス(出典:資源エネルギー庁)

 

こうした背景から、徹底した省エネと非化石エネルギーの拡大を進めるために、第6次計画における2030年の電源構成(エネルギーミックス)では、再エネ、水素・アンモニア、原子力の比率を合わせて57〜61%とし、原油換算で6200万kLの省エネという野心的な見通しを示しました。

 

エネルギー自給率を2倍以上引き上げへ

第7次エネルギー基本計画の原案の、2040年度におけるエネルギー需給の見通し(出典:資源エネルギー庁)

 

資源エネルギー庁が12月17日に公表した第7次エネルギー基本計画の原案では、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などを受けて、エネルギーや経済の安全保障をより重視する考え方が示されています。エネルギー自給率の観点から、国内で資源調達ができる再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとしています。また、原子力も最大限活用するとし、国内にある技術で対応できるという意味の「技術自給率」があることも強調しています。

 

マイルストーンを2030年から2040年に後ろ倒しし、2040年度の温室効果ガス削減率は暫定値で73%としています。2040年のエネルギーミックスは、再エネが4〜5割程度、原子力が2割程度、最終エネルギー消費量は、昨年度実績(見通し)の3億kLより少ない2.6〜2.8億kLとなっています。これによって、エネルギー自給率を3〜4割にまで引き上げたい考えです。

 

その一方で、デジタル化によるデータセンターの増加などによってエネルギー消費量は伸びると見込まれており、省エネの重要性はますます高まるでしょう。また、2040年に向けては経済効率性の高い対策から順に実施するという基本的なスタンスも確認されました。

 

 

40年度の温室効果ガス削減率が今後の焦点

第7次計画の原案では、第6次計画からの抜本的な方向転換はなく、これまでの方向性を踏襲するとともに安全保障の考え方を強めています。安全保障に加えて、脱炭素の観点にも合致することから、発電時に二酸化炭素を排出しない再エネと原子力の割合が増加した形です。全体を通じて「経済効率性」や「現実的な対応」という言葉が目立ち、より実践的な計画案になった印象を持ちます。

 

この先、2040年度の温室効果ガス削減割合を含めて、原案がどのように最終化されるのかを引き続き注視していきます。

 

(参考:資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 第67回基本政策分科会

 

 

 

 

 

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook    HP