2020.04.16 Update
3倍の値段なのに売れる?!チョコレートの秘密
オレンジ色のパッケージが目を引くこちらのチョコレート。オランダのスーパーで一般的に売られていますが、値段はなんと通常のチョコレートの3倍。それにもかかわらず人気を博し、世界からも注目を集めています。
一体どのような秘密が仕掛けられているのでしょう?
写真: 左上から時計まわりに、pickwick -JACOBS DOUWE EGBERTS、Wilhelmina -fortuin、TONY’S CHOCOLONELY -TONY’S CHOCOLONELY
エシカルフードとチョコレート
今日の日本では、どこでも食べたい時に食べたいものを食べられる環境が整っています。一方で、食を取り巻く活動には、児童労働や労働者の搾取、貧困、環境汚染など世界的な問題が常に密接しています。
例えばチョコレートの原料であるカカオの栽培は、奴隷として売買された子供たちの労働に頼っています。
この問題解決に果敢に挑んだ男性がいました。オランダのジャーナリストTeun (Tony) van de Keukenことトニー氏です。彼のアイデアは「カカオを適正価格で取引する」方法で、奴隷労働に頼らないチョコレートを生産するというものでした。紆余曲折を経て、彼は見事にそのアイデアを実現します。こうして販売されているのが先ほどご紹介したチョコレート・TONY’S CHOCOLONELYです。
Tony’s Chocolonely公式サイトより https://tonyschocolonely.com/int/en/our-story/our-mission
このように、道徳・倫理的な価値観に基づいて、食の生産から消費の流れの中にある問題の解決を図る新しい食の考え方を「エシカルフード」と言います。
原料を適正価格で調達しているためチョコレートの販売価格も高くなっていますが、一定の需要が継続して存在していることを考えると、エシカルフードを求める消費者のニーズはとても高いことがわかります。
エシカルの概念に基づいた貿易のしくみ、「フェアトレード」
エシカルフードに直結する考え方のうち代表的なものとして、「フェアトレード」が挙げられます。
フェアトレードは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみを指します。特に生産された食品を仲介者が過度に買い叩かず基準価格以上で買い取り、消費者はそれを踏まえた上で商品をフェアトレード価格で購入する点が特徴的です。先ほどのチョコレート例はまさにこの考え方が取り入れられています。
図1 フェアトレードの概念図
そして、国際フェアトレード基準は、経済的基準、社会的基準、環境的基準の3つの観点から構成されています。国際フェアトレード基準が示す項目はいずれもエシカルフードに直結する考え方です。
表1 国際フェアトレード基準の原則 FAIRTRADE JAPANより引用 https://www.fairtrade-jp.org/
さらに、フェアトレードの取組みは、SDGsが掲げる17の目標のほぼすべてに関係している点も特徴的です。世界人口の40%は農業で生計を立てており、1億5200万人の児童労働者の70%以上が農業に集中していることを考えると、持続可能な農業と貿易を促進するフェアトレードの意義は非常に大きいです。エシカルフードの概念も同様にSDGsが掲げる17の全目標に関係するポテンシャルを有しており、注目を集めています。
図5 エシカルフードとSDGsの関わり(スマートシティニュース編集部独自作成)
エシカルフードが持続可能な開発へ貢献
エシカルフードという言葉自体はまだ普及の途上ですが、その活動は世界的に大きく広がっており、今後ますます世間から注目されることが予想されます。そして将来的には様々な食品に選択肢として現れるようになるはずです。SDGsのすべてのターゲットに関わるエシカルフードを、一人一人が手に取る機会が少しずつ増えれば、持続的な社会にまた一歩近づくのではないでしょうか。