WELL認証ニュース:世界では普及拡大、日本では導入に課題も

2018.11.16 Update

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WELL認証ニュース:世界では普及拡大、日本では導入に課題も

以前スマートシティニュースで、人の健康に配慮した建物・室内環境及び業務運用の認証システムである「WELL認証」についてご紹介しました(記事はこちら)。今回はそのWELL認証についての最新動向と、日本における導入状況についてご紹介します。

「WELL v2」をリリース、認証が得やすく?

2014年にアメリカの公益企業IWBI(International WELL Building Institute)より公開されたWELL認証ですが、2018年5月31日に認証システムおよび評価基準が改定され、第2版「WELL v2」がリリースされました。

従来のWELL認証の評価項目は、空気、水、食物、光、フィットネス、快適性、こころの7つのコンセプトで、合計100項目(必須項目41、加点項目59)でした。WELL v2では従来の7つを一部改変した上で、新しいコンセプトを3つ加え、空気、水、栄養、光、運動、温熱快適性、音、材料、心、コミュニティの計10コンセプトで評価します。また評価項目数は必須項目23、加点項目89の合計112項目となりました。認証レベルは、加点項目に割り振られたポイントの合計で決まります。必須項目が減少し、加点項目が増えたため、項目選択の柔軟性が高まったと言えます。一方、コンセプトが7項目から10項目に増加し、各コンセプトで獲得しなければならない最低ポイント、および各コンセプトで獲得できるポイントの上限が決まっているため、検討しなければならない事項が増えた面もあります。

表1 改訂前の評価カテゴリと項目数(必須項目+加点項目)(編集部作成)

表2改訂後(WELL v2)の評価カテゴリ(編集部作成)

世界規模で年々着実に拡大

WELL認証は2014年10月にリリースされて以来、世界的に拡大している認証システムで、2018年11月9日現在世界中で1,031件の認証、あるいは認証に向けた登録がされています(注1)。認証・登録件数が一番多い国はアメリカで339件です。これに中国236件、フランス67件、オーストラリア64件と続きます。日本は世界12位の10件です。世界的に見ても導入の機運は高まっており、年別の登録件数をみると、2015年は96件、2016年には224件、2017年には349件と年々認証・登録件数は増加しています(図1)。

図1 国別認証・登録件数(累積)の推移(編集部作成)

2029年には590倍、3.6万件に拡大?

今後の認証・登録件数について、WELL認証と同様、アメリカ発祥の「LEED認証」(建築物の環境性能を評価する認証制度)の認証・登録件数を参照し、仮に同様に拡大したとすると、認証開始から15年後の2029年には認証件数3万6千件以上(登録件数39万件)となると予想されます (図2)。

図2 WELL認証の認証件数推定(編集部作成)

日本での導入状況とリーディングプロジェクト

日本でもWELL認証取得は少しずつ広がっています。現在日本ではWELL認証の認証・登録件数は10件、そのうち認証件数は1件です(表3)。

 表3 日本のWELL認証登録施設・認証取得施設詳細(編集部作成)

国内でのリーディングプロジェクトとして、清水建設株式会社(以下、清水建設)もWELL認証取得推進に向け、積極的に活動を行っています。清水建設は、東京都江東区豊洲で新規開発予定のオフィスにおいて、緑と水辺の周辺環境を活かして、オフィスワーカーの健康・快適性に配慮した付加価値の高いオフィス環境を構築し、WELL認証を取得する予定です(図3)(注2)。

図3完成予想パース(清水建設HPより引用)

日本での普及にあたっての課題

少しずつ日本でも広がるWELL認証ですが、普及を進めるにあたり課題もあります。日本においてWELL認証を導入する際の障壁は、WELL認証がアメリカの基準をベースに作られたものであるため、原則、アメリカの基準を適用する必要があることです。また、屋内全面禁煙や食堂の運営に対する評価項目の適用も障壁となる場合もあります。日本でも登録件数は増加していますが、世界的に見ると少数にとどまる理由はここにあると言えます。今後、認証取得を狙うプロジェクトが増えていく中で、WELL認証における評価基準に、日本の基準が適用できる項目が増えていくことによって、今後、日本でもWELL認証が普及していくことが期待されます。

 

(注1) WELL認証の登録は、プロジェクトの基本情報を入力することで完了する。認証は、文書レビューと、審査員が現地にて行う性能検証に基づき得られる。

(注2)清水建設PR「豊洲エリアで大規模複合開発計画が始動~総延床11万m2超、賃貸オフィスとホテルを一体開発~」https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2018/2018013.html

 

(文:スマートシティニュース編集部)