宅内IoT、体験レポート

2019.04.09 Update

IoT スマートホーム ナッジ

宅内IoT、体験レポート

IoTデバイスをとりつけて、住宅をスマートホームにする、そんなサービスが登場しています。いわゆる、宅内IoTサービスなのですが、後付けで機器をとりつけるだけでいいというのが、かつてのスマートホームと大きく異なる点です。

宅内IoTサービスは、公益事業とも相性が良く、こうした事業者を中心に、新しいビジネスになっていくと思います。

とはいえ、普及はこれから。課題もあるかもしれません。そのためには利用してみるのがいちばんです。今回は、necolicoが販売しているIoT機器と、Fit Bitのウェアラブルを使用しました。

HEMSに必要なのは、ナッジと自動制御

宅内IoTサービスの中心となっているのは、HEMS(Home Energy Management System)です。IoTという言葉が普及する前から存在しているシステムですが、エネルギーデータをクラウドで管理するという点では、間違いなくIoTのシステムです。

筆者はこれまで、パナソニックのスマートHEMS、および家電分離技術を持ったEncoredのEnetalkという2種類のデバイスを使ってきました。スマートHEMSは、分電盤の分岐回路の電流も測定しており、家の中の細かい電気の使い方がわかります。また、Enetalkは1秒単位で全体の消費電力を測定した上で、家電分離技術を用いてどの家電が稼働しているのかを推定しています。

今回、使ったのは、Next Driveの製品で、スマートメーターから直接データを受信する、いわゆるBルートタイプの製品です(写真1)。コンセントにさしてセッティングするだけなので、スマートHEMSやEnertalkと比較すると、はるかに手軽です。電力会社(送配電会社)にBルート利用を申請することが必要ですが、これも電力会社のサイトで行い、遅くても2週間後には利用可能になったという通知がきます。

では、BルートタイプのHEMSは役立つのか。正直に言えば、データをそのまま提供される限りでは、スマートHEMSやEnetalkほどの細かいデータにはなっていないので、省エネの参考にしにくいと思いました。理由の1つは、スマートメーター側にあるのですが、提供される電力量が0.1kWh単位なので、データの粒度が低いということです。

とはいえ、HEMS一般で指摘されていることですが、ユーザーはしばらくすれば飽きるということがあります。これは、スマートHEMSやEnetalkでも同様でした。

もちろん毎日の電力量がわかるので、電気を使いすぎているかどうかは何となくわかります。ならば、ユーザーに対して省エネをうながす、プッシュ型のメッセージがあるといいと思いました。ユーザーの背中を押すようなしくみですね。

それから、HEMSには機器を制御する機能も含まれています。日本では、ECHONET-Liteというプロトコルが定められているのですが、HEMSはともかく、家電の方は対応する機種が少ないということです。それでも、エコキュートやエネファームなど、設備ともいえる機器は対応しています。こうした機器を制御して、余っている日中の太陽光の電気を使うようにできたらいいと思うのですが、どうなのでしょうか。

快適な暮らしを提供する環境センサー

IoT機器で、もっとも使えると思ったのが、環境センサーでした(写真2)。OMRONの環境センサーは、小さいながらも、気温、湿度、照度、気圧、騒音、CO2濃度、揮発物質濃度(eTVOC)を測定してくれますし、USBポートにさすだけなので電源の心配もいらないという優れものです。

気温と湿度は、とりわけ冬は重要な情報です。エアコンで暖房をしていると、設定温度が部屋の温度だと思ってしまいますが、実際の部屋の温度は違っています。また、ストーブでの暖房だと、設定温度がそもそもありません。それに、乾燥した空気は風邪をひきやすくします。こうした情報がスマホでわかるというのは、とても便利です。

また、CO2やeTVOCのデータを通じて、部屋の換気をうながす情報が届くというのも、とても便利です。

機器の制御を連動させて、エアコンの自動制御や自動的な換気などができるといいかな、と思いました。

加速度センサーは使い方しだい

ドアの開閉などを通知してくれるのが、加速度センサーです(写真3)。玄関のドアに取り付けておくと、子どもの帰宅がわかる、といったところでしょうか。でも、24時間で設定すると、玄関の出入りすべてが通知されるので、ちょっとうるさいかもしれません。それに、外出なのか帰宅なのか、ドアを開けただけなのかもわかりません。

冷蔵庫にもとりつけてみたのですが。外出先で通知がくると、自宅で誰かが活動しているってわかって、なんかおもしろい気分になります。

センサーの感度が高いので、ちょっとした振動でも通知してくれます。おそらくベッドに取りつけたら、起床などもわかるでしょう。そこまでやっていないのですが。

とはいえ、使い方には工夫が必要かもしれません。何を知りたいのか、はっきりさせるということです。逆に、アイデアしだいでユニークな使い方ができるかもしれません。

カメラにはプライバシーの問題

ネットワークカメラは便利なようで、問題の多い機器だと思いました(写真4)。まず、玄関にとりつけてみました。動きがあると、通知してくれて、数秒前にさかのぼって画像を見ることができます。これで外出や帰宅、不審者の侵入などの画像を見ることができます。

でも、これは家族にものすごく不評でした。監視されたくないということです。

ネットワークカメラのサービスを提供しているある事業者の方によると、カメラのユーザーでもっとも多いのは、ペットの見守りだということです。確かにペットはプライバシーを気にしません。一方、高齢者はカメラで見守られたくないということです。

ヘルスケアIoTは市場性あると思うのですが

ウェアラブルは健康管理のツールとしても、けっこう広まっていると感じています。アップルウォッチにもそうした機能があるのですが、よりシンプルで手ごろな価格の製品もあります。使ってみたのは、Fit BitのCharge3で、すっきりしたデザインがいいですね(写真5)。歩数だけではなく、走ったときやサイクリング、水泳なども測定してくれますし、心拍数もわかります。これにより、消費カロリーもわかるというものです。山登りをすると、何階分の高さを上ったかもわかります。摂取カロリーと摂取した水の量、体重は入力しなきゃいけないのですが。でも、成人病予防のツールとしてはいいと思います。

実際に、健康経営を目指す企業が、社員に配布しているというケースもよく聞きます。

このほかに、体重や血圧を管理するIoT機器もあります。使ってみて、ヘルスケアIoTというのは、HEMSとちがって毎日確認するものになると思いました。

元々、人間は狩猟・採集生活に適するように進化してきたので、ゴリラやチンパンジーのようなゆったりとした生活をすると病気になるそうです。最低、1万歩は歩かないといけないとか。

それに、ヘルスケアの国内市場規模は60兆円ともいわれており、エネルギー市場よりも大きいですね。

スマートハウスと一緒に、健康管理サービスというのも、組み合わせるといいのではないかと思いました。

今後、より消費者のニーズに合致したIoTサービスが登場することを期待しています。

 

エネルギーデザイン事務所:本橋恵一