2024.05.02 Update
環境省、世界で初めて海藻のブルーカーボンを国連に報告
環境省がブルーカーボンの取り組みに力を入れています。今年4月には、世界で初めて、温室効果ガス排出量と、海草藻場・海藻藻場による吸収量を合わせて国連に報告しました。ブルーカーボンとは何か、どのような取り組みが行われているのかについて紹介します。
ブルーカーボンとは
ブルーカーボンとは、海草(うみくさ)や海藻(うみも)といった沿岸・海洋の生態系や土壌によって吸収・固定される炭素のこと。温室効果ガス(GHG)の吸収源対策として注目されています。
ブルーカーボンの主要な吸収源としては、アマモなどの海草、ワカメやコンブなどの海藻、干潟、マングローブなどが挙げられます。海草と海藻の大きな違いは、繁殖の方法。海草は海中で花を咲かせ、種子によって増えますが、海藻は胞子によって繁殖します。
海草や海藻は、生き物のすみかになるほか、水質を浄化する作用もあります。豊かな海は、レジャーや水産資源などの形で私たちの暮らしも豊かにしてくれます。ブルーカーボン生態系には、GHG吸収源としての働きの他にも、多くの価値があるのです。
なお、ブルーカーボン吸収源の1つであるアマモについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
(参考:アマモで海と暮らしを豊かに!「全国アマモサミット2023」現地レポート)
世界で初めて海草・海藻のブルーカーボンを国連へ報告
国連が定めるGHG排出・吸収量の算定方法論(IPCCガイドライン)では、マングローブ、潮汐湿地、海草藻場の3つが示されています。環境省は昨年の報告で、マングローブによるブルーカーボンを報告しました。
そして今年、マングローブに加えて、海草・海藻藻場によるブルーカーボンを報告。海藻についての方法論はガイドラインに示されておらず、世界初の取り組みです。残る潮汐湿地については、今後検討していくとしています。
国連にブルーカーボンのGHG吸収量を報告している国としては、日本の他に、オーストラリア、米国、英国、マルタがあります。これらの国々は、主にマングローブによる吸収量を報告しており、直近の報告量では、米国が年間約1000万トン-CO2の吸収量を報告しています。これは、米国の総排出量の0.2%に相当するということです。
(参考:環境省WEBサイト『ブルーカーボンの取組について』)
ブルーカーボンのクレジット化の取り組み
ブルーカーボンの取り組みを後押しする仕組みとして、独自にクレジット化を行っている自治体があります。代表的なものが横浜市と福岡市ですが、クレジットの算定方法が異なります。
横浜市による「横浜ブルーカーボンオフセット制度」では、活動を実施しない場合の吸収量のベースラインを定め、ベースラインを越えた吸収量をクレジットとして取り扱います。この取り組みは平成26年度から令和4年度まで実施されていました。(参照:横浜市WEBサイト『横浜ブルーカーボン・オフセット制度』)
一方で、福岡市の「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」では、現存するアマモ場などの吸収量を推定してクレジット化しています。この取り組みは令和2年度から毎年行われており、令和5年度には合計42.5トン-CO2がカーボン・オフセットとして市に認証されました。(参考:福岡市WEBサイト『福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度』)
また、団体による独自の取り組みとして「Jブルークレジット制度」も広がりを見せています。Jブルークレジット制度とは、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が認証・発行・管理する独自のクレジットです。自主的な活動によるGHG吸収量の増加を、ベースラインと比較して算定する点では、横浜市と似た仕組みだと言えます。Jブルークレジット制度の認証サイト数や面積は近年、急激に伸びており、今後も取り組みの拡大に期待したいと思います。
(参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合WEBサイト『Jブルークレジット』)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook