2024.06.11 Update
第7次エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の策定へ、議論スタート
国のエネルギー政策の基本方針である2つの計画の見直しがスタートしました。経済産業省では第7次エネルギー基本計画、環境省では、新たな地球温暖化対策計画の策定に向けた議論が行われます。それぞれの計画について、今後の検討のポイントを考えます。
第7次エネ基、電気の需給をめぐる状況の変化を考慮
エネルギー政策の根幹となるエネルギー基本計画は、数年おきに見直しが行われています。現行の第6次エネルギー基本計画が策定されたのは、2021年10月。第6次計画では、再エネの最大限導入を掲げ、2030年のエネルギーミックス(電源構成)における再エネの割合を36〜38%としています。(参考:経済産業省・資源エネルギー庁『エネルギー基本計画について』)
経産省は5月、総合資源エネルギー調査会において、第7次計画の策定に着手しました。エネルギーミックスは、引き続き大きな焦点となるでしょう。2050年カーボンニュートラルに整合する中期的な目標が求められますが、それには、電気の需給に関する足元の動きを把握しなければなりません。
近年、省エネなどの成果によって、全国の電気の需要は減少の傾向です。しかし、デジタル化が進んでいることや、大量の電気を消費するデータセンターなどの建設が見込まれることなどから、この先、電気の需要は増加すると予想されています。
国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、2026年の電気の需要に占めるデータセンターの割合は、欧米や中国などを中心に増加すると予想されています。国内でも、2024年以降、関東、関西などで多くのデータセンターの新設が計画されており、電気の需要が増加する可能性を十分に考慮する必要があります。
(参考:2024年以降のデータセンターの新設計画。出典:資源エネルルギー庁)
一方で、電気の供給に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の緊迫化などの地政学リスクを踏まえることが重要です。エネルギーに関する地政学リスクは高い状態が続くと考えられているため、エネルギー安全保障を確保することは極めて重要なテーマです。
米国やEU、ドイツなどでは、グリーントランスフォーメーション(GX)を産業振興につなげる投資促進政策が加速しています。こうした世界の動きを受けて、日本ではどのような方向性が打ち出されるのか、関心が高まります。経産省は、年内にも第7次計画の素案をまとめるとしています。
(参考:経済産業省・資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会)
地球温暖化対策計画は2025年4月にも一部改正へ
一方で、同じく2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画に関しても、環境省で改訂に向けた議論がスタートする見通しです。
2030年度において温室効果ガスを46%削減(2013年度比)することを踏まえて策定された現在の地球温暖化対策計画では、自治体が再エネの促進区域を設定できるようになったこと、住宅や建築物の省エネ基準への適合の義務づけが拡大されたこと、脱炭素先行地域の創出が始まったことなどが、大きなトピックでした。
なお、地球温暖化対策計画は、2025年4月にも一部改正が予定されています。具体的には、国際間でカーボン・クレジットを取引する二国間クレジット制度(JCM)を実施する体制を強化することなどが計画されています。地域脱炭素化促進事業の拡充に関しては、市町村が定める再エネ促進区域について、都道府県との共同で定めることを認め、複数の市町村にわたる計画の認定を都道府県が行うなどとされています。
こちらも年内にかけて議論が進められるとみられます。自治体の施策に深く関わる計画の見直しについて、引き続き注目していきます。
(参考:環境省)
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook