SDGs解説:相互に関連しあう17の目標

2020.04.27 Update

SDGs

SDGs解説:相互に関連しあう17の目標

SDGs(持続可能な開発目標)は老若男女すべての人を対象に、あらゆる地域において達成が目指されている目標です。

具体的な内容としては、社会福祉や教育、公衆衛生、平等、環境、ビジネス、都市計画、経済、エネルギー等の面で、人々の生活の行動指針となる17の目標が存在しています。

これらの目標について、環境省から発行されたSDGs活用ガイド(2018)や環境白書(2017)では各目標間に関連性があることが言及されています。そこで、今回は経団連が作成したSDGs事例集を活用して、各SDGs目標の関連性を分析してみました。

図2 経済・社会・環境・ガバナンスに17目標を大別した図(平成29年版環境白書より)

経団連のSDGs事例集

SDGsへの社会的な関心の高まりを背景に、経団連ではKeidanrenSDGs(https://www.keidanrensdgs.com/home-jp)というSDGsの取り組み事例集を公開しています。本記事では、SDGs事例集で紹介されている先進的な事例を、スマートシティ企画が独自に分析したうえで利用しています。

関連性の高い目標の抽出

まず、SDGs事例集を用いて関連性の高い目標を調査しました(表1)。

この表は、縦軸に主目標、横軸に副目標(副次的に解決が期待できる目標)を並べ、ある主目標を持つ複数の事例について、どの副目標をどれ程の割合で有するかを示しています。

例えば、「1.貧困をなくそう」を主目標とする事例のうち、33%の事例が「3.すべての人に健康と福祉を」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」をそれぞれ副目標に設定していることが読み取れます。また、同様に67%の事例が「4.質の高い教育をみんなに」を副目標にしていることが分かります。

表1  SDGs事例の主目標と副目標の関係

スマートシティニュース編集部作成

※各副目標を有する事例が10%以上で赤、20%以上で緑、50%以上で青でセルの色を表記
※各事例は一つの主目標に対して複数の副目標を保有するため、各主目標における副目標の割合の和は100%以上の値となります。

この調査の結果、主目標と副目標の組み合わせにはある程度偏りがあるのではないか、ということが読み取れました。中でも顕著な例は下記のようになりました。

表2 特に関連性の強い主目標と副目標の例

スマートシティニュース編集部作成

目標間に関連性が認められる典型的な事例

では、このように強い関連性が見られる典型的な事例にはどのような取り組みがあるのでしょうか。

・主:「1.貧困をなくそう」 副:「4.質の高い教育をみんなに」

博報堂、朝日新聞社、JICAがタイで子供向けの学習誌「みっけ」を定期的に無償配布、出張授業などを行っている事例がこれに当たります。貧困層・脆弱層の基礎的サービスのアクセス改善、経済的平等という側面と、平等な教育の実施という側面を併せ持つ活動です。

・主「5.ジェンダー平等を実現しよう」 副:「8.働きがいも経済成長も」

野村アセットマネジメントの取組である、日本株女性活躍ETFの新規設定を行った事例がこれにあたります。ETFとは、日経平均株価などの特定の指数に連動する運用成果をめざした投資信託を指します。この取り組みにより、女性が活躍する企業が投資を受けやすくなり、性差に寄らず多様な人材が活躍できる社会が一層推進されることが期待されます。

・主:「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」 副:「13.気候変動に具体的な対策を」

フジタが行う、ミャンマーにおけるもみ殻を燃料とした発電施設を建設する事例がこれに当たります。稲作が盛んな地域における、精米所の電力不足、もみがらの不法投棄という課題を受けて、もみ殻のバイオマス発電施設を建設した例です。エネルギーの安定供給につながる一方、効率の良い発電事業を実現することにより、低炭素な社会の構築にも貢献しています。

SDGsの関連性をビジネスに活用する

以上で見てきたように、SDGsのターゲットには相互に関連し、同時解決を目指すことができるものが多いようです。ビジネスシーンでこの視点を持つことで、既存のある課題を解決する取組をSDGsの文脈で捉えなおし、新しい課題解決に再活用することにもつながりそうです。

また、逆に表1の中でまだ関連する事例があまり無いターゲットの組み合わせに着目し、「この複数の目標を同時解決できるのはどんなビジネスだろう」という視点を持つことは、他の企業がまだ取り組んでいない新しいビジネスが誕生するきっかけにもなるのではないかと思いました。

Text by スマートシティニュース編集部