2023.09.19 Update
秋田県、県内再エネを100%活かした「再エネ工業団地」の調査業務を開始
秋田県では、県内の再生可能エネルギーを最大限活用した「再エネ工業団地」の構築を目指し、2028年をめどに、工業団地内で自立した電力供給事業を始めるとしています。今年7月には、調査等業務委託の企画提案競技を実施しました。
県内の洋上・陸上風力や太陽光発を最大限活用
秋田県は昨年3月、「第2期秋田県新エネルギー産業戦略(改訂版)」を策定し、脱炭素を加速するとともに、新エネルギー関連産業の集積を県の持続的な発展につなげることなどを目指しています。
秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖や秋田港・能代港の港湾区域では洋上風力発電事業が進められており、陸上風力発電を合わせると県内の風力発電導入量は約64.6万kW。県によると、これは全国第1位の導入量ということです。
そこで県は、こうした豊富な再生可能エネルギーをセールスポイントとして、県内産再エネを100%活用した「再エネ工業団地」を秋田市北部の下新城地区工業団地に整備することを掲げています。県内で発電した再エネ電気を遠く離れた消費地に送るのではなく、県内に需要を生み出すことでエネルギーの地産地消を実現しようとしています。
さらに、地域脱炭素のために再生可能エネルギーの使用量を増やすだけにとどまらず、再エネを活用した工業団地であることを企業に訴え、企業誘致につなげる狙いがあります。
(参考:秋田県 第2期秋田県新エネルギー産業戦略(改訂版)について)
「可能な限りフィジカルな電力供給目指す」理由
「再エネ工業団地」の実現にあたっては、再エネ発電所と需要地を直接つなぐ自営線などを設置して「可能な限りフィジカルな電力供給を目指す」としています。
フィジカルな電力供給とはどういうことなのでしょうか。そもそも、再エネ電気がもつ価値には、電気そのものの価値に加えて、CO2排出量が少ないという環境価値があります。フィジカルな電力供給では、電気と環境価値を一緒に供給しますが、フィジカルの対義語であるバーチャルな電力供給では、環境価値しか供給しません。
そのため、バーチャルな電力供給の場合、電気そのものの価値は市場や他の発電事業者へ売却されます。つまり、再エネ電気がもつ2つの価値のうち、電気の価値が県外へ流出してしまう恐れがあります。そこで、県では再エネ電気の2つの価値をできる限り地産地消して域内の経済循環をより高めるため、フィジカルな電力供給を目指しているのです。
2028年ごろに団地内の電力供給事業を開始へ
今年7月には、「再エネ工業団地への電力安定供給体制構築に向けた調査等業務委託」に係る企画提案競技を実施し、実現に向けた課題の洗い出しに着手しました。今後は、設計や工場建設などのハード整備と同時に、電力供給事業の中核を担う事業者の選定や誘致を行うとしています。
(参考:秋田県「再エネ工業団地への電力安定供給体制構築に向けた調査等業務委託」に係る企画提案競技の実施について)
民間の間でもカーボンニュートラルを目指す企業が増える中、再エネ電気の供給を受けられる工業団地の魅力はどんどん高まっていくでしょう。自治体が企業誘致に取り組む際、再エネ電気の供給が受けられるという点が大きなセールスポイントになるということです。再エネを地域産業の活性化につなげようとする秋田県の取り組みに、これからも目が離せません。
制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook