2024.12.06 Update
COP29、気候資金の引き上げなど3つのポイント
国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が2024年11月11〜24日、アゼルバイジャン共和国の首都バクーで開催されました。焦点となったのは、途上国への気候変動対策資金の引き上げでした。COP29の成果について3つのポイントを解説します。
ポイント①途上国への気候対策資金を年間3000億ドルに引き上げ
COPでは従来、先進国が途上国への気候変動対策資金を拠出することを求めており、その額は年間1000億ドルを目指すとされてきました。2015年のパリ協定採択時には、これを2025年まで継続することが決められました。しかし、実際の拠出額はなかなか1000億ドルに到達せず、2022年時点に初めて1159億ドルとなりました。
こうした背景から、近年のCOPでは途上国が先進国に対して資金の拠出を強く求める傾向になっています。また、2025年以降の資金についても関心が高まっています。2025年以降の途上国への気候変動対策資金を「気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG、New Collective Quantified Goal)」、あるいは「ポスト2025年目標」と呼びます。
今年のCOP29では、度重なる草案の修正を経て、NCQGを先進国が民間資金と公的資金を合わせて2035年までに年間3000億ドル(約46兆円)とすることが決定しました。交渉がまとまったのは、会期を2日延長した11月24日のことでした。
また、すべてのアクターに対して、公的・民間資金源から途上国向けの気候変動対策資金を年間1.3兆ドル以上に拡大するために、ともに行動することを求めるとしました。これらの目標を「バクー財政目標(Baku Finance Goal)」と呼びます。なお、昨年のCOP28についてはこちらの記事で解説しています。(参考:https://www.smartcity.jp/post/energy20231229_1458/)
ポイント②損失・損害基金が全面的に運用開始
2年前にエジプトで開かれたCOP27では、気候変動による災害で被害を被った途上国への資金支援のあり方が議論し、気候変動の悪影響に伴う損失と損害(ロス&ダメージ)を支援する措置として「ロス&ダメージ基金(仮称)」を設置すると決定しました。(参考:https://www.smartcity.jp/post/energy20221226_1316/)
この基金の運用を開始することが、今回のCOP29で決定されました。これまでに7.3億ドルの支援額が基金に集まっており、基金の理事会と世界銀行、ホスト国であるフィリピンとの間で運用に関する契約が締結されました。これによって、ロス&ダメージ基金は2025年からさまざまなプロジェクトへの資金提供を開始する見込みです。
ポイント③パリ協定第6条の完全運用化
パリ協定第6条とは、「市場メカニズム」と呼ばれ、国際的に協力して温室効果ガスの削減・除去対策を実施する仕組みを定めたものです。実施にあたって、クレジットの分配にかかる手続きや各国の承認、報告の様式などの細かい内容が決定されました。市場メカニズムの細かなルールに関しては、これまで約10年にわたって議論が続けられており、ようやく集結した形になりました。今後は、この仕組みに参加する国々をどうやって増やしていくかが論点になりそうです。
(参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/pagew_000001_01129.html、https://cop29.az/en/home)